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5.おわりに4/2009の幅を広げていくことが必要となっている。 ③ ビジネスマインドは営業職員との同行により顧客ニーズの引き出し方等を学んでいるが,必ずしも成約事例に当たるとは限らず,クロージングまできっちりと指導が行き届いていない。 このような課題を解決することにより,技能・技術に加えてヒューマンスキルとビジネスマインドを兼ね備えた,お客様に信頼され,業績貢献できる技術を持った「人」が着実に育っていく人材育成システムとなることが期待できる。 今回は環境測定分析の「試料採取の工程」についての「技」と「人」の両面の育成を紹介したが,残りの工程(図14)参照)である「前処理および測定・分析の両工程(試験所内にて行われる化学分析や検査)」についての能力開発の構築も重要な柱であり,これについては次の機会に紹介したいと考える。 一連の能力開発は,最終的には古武道の流れにある「守・破・離」にならい,まず基本技能を忠実に身に付け,自ら経験を重ねることにより幅を広げてより良い手順を模索し,深く技術にかかわることによりだれにも負けない技術者として自立していくことが,高度な技能・技術を持つ者の到達イメージと考えられる。 特に中間の「破」るためには,自身の内部に後々「暗黙知」となる技術の概念が形成9)されなければならない。そのためには初期に「実践的な技能者」として多くの業務数をこなし基本技能を「守」れるまで身に付けさせた後に,能力開発としては非効率的ではあるが「教えない」指導や熟成を見守る「待つ」教育も訓練対象者のパーソナリティに合わせて随所に取り入れることにより最良の技能・技術を自らの力で発見できる(気づく)ように促し,さらに折に触れてキャリアコンサルティングを活用して自1)経済産業省経済産業政策局:平成19年特定サービス産業実態調査.経済産業省HP, http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/tokusabizi/result-2/h19.html2)独立行政法人雇用・能力開発機構:カリキュラムモデル検索.職業能力開発ステーションサポートシステム,職業能力開発総合大学校能力開発研究センターHP, http://www.tetras.uitec.ehdo.go.jp/CurriculumModel/3)中央職業能力開発協会:職業能力評価基準のご案内.中央職業能力開発協会HP,http://www.hyouka.javada.or.jp/4)村井政志(2004):環境測定分析分野における簡易法の動き.環境と測定技術,2004,31,(10):32-365)科学技術振興機構研究基盤情報部情報整備課:Webラーニングプラザ(技術者向けeラーニング).科学技術振興機構HP,http://weblearningplaza.jst.go.jp/6)ASTMD5829(1996):StandardGuideforPreparingaTrainingProgramforEnvironmentalAnalyticalLaboratories-環境分析試験所のための教育・訓練プログラムの作成に関する標準指針7)経済産業省経済産業政策局:「社会人基礎力」について.経済産業省HP, http://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/index.htm8)厚生労働省職業能力開発局:「ジョブ・カード制度」のご案内.厚生労働省HP, http://www.mhlw.go.jp/bunya/nouryoku/job_card01/index.html9)森和夫(2006):職人の熟練技能とその伝承をめぐって.技能と技術,2006,(6):2-7らを振り返らせて自分の技術レベルを客観的に見つめさせることにより,「離」れて行動しても安心して任せられる「自らの力で考える強い技術者」が育成でき,このときはじめて真の技能と技術の融合が達成できるものと思われる。 今後は環境・化学系職種についても職業能力開発大学校等の育成機関が中心となり職業スキルの標準化が行われ,それを活用して育成した人材の活動により環境測定分析の業務の技術水準が確保され,どこの事業者へ環境調査を依頼してもその調査結果の精度の担保がなされることで,社会の安全と健康等が維持され続けていくことを強く望む。25<参考文献>

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