4/2009
24/44

1.はじめに2.調査員に必要なスキルは何か? 社会の安全と健康さらには快適性を確保する専門・技術サービス業として環境関連の職種にはさまざまなものがあるが,その中でも大気・水質・土壌等の環境測定分析の業務を実施している「環境計量証明業」には全国で約1万人以上1)が従事している。環境測定分析は非破壊検査等と異なり手作業にて操作する前処理工程が多く,その職員に求められる技術的能力には環境管理に関するスキルばかりではなく,化学系等の基礎的な知識・技能も必要となっている。しかし職業スキルとしての統一されたカリキュラムモデル2)や職業能力評価基準3)などは十分に整備されておらず,また,能力開発に関連する資格である「化学分析の1級技能士」や「公害検査科の職業訓練指導員」の項目においてもダイオキシン類調査のような現在の極微量物質分析の技術水準に対応できる内容では必ずしもない。したがって現状では業務を営むおのおのの事業者において独自のノウハウとしてOJTを中心に能力開発を展開しており,その内容によっては調査結果の数値の精度に大きく影響する場合も考えられる。 そこで今回は環境測定分析の工程(図14)参照)の一部であり,調査個別の現場サイトにて試料を採取するタイミングや場所を判断することから,調査結果に最も影響を及ぼすこととなる「試料採取の工程(サンプリング作業(現地測定含む))」の業務に従事する調査員について,弊社にて構築した教育訓練システム等の例を参考として紹介する。 教育・訓練の実施に当たってはまずサンプリング作業に適した「求める人材像」を定めなければならず,最近の複合的な環境測定分析に求められる「マルチな能力を持つ調査員」を育てたい希望を考慮すると,人材育成の基本に立ち戻り「技」と「人」の両面が教育方針には必要となった。すなわち環境測定分析のサンプリング作業においては,試料採取に係る技能・技術としての「技」だけではなく,外勤職としてお客様と接してコミュニケーションをはかり,打ち合わせや調査計画の検討ができる「人」としてのスキルも重要な要素であることがわかった。 そこで教育方針は, 「お客様に信頼される技術,人間性を持ち,業績貢献できるビジネスマインドを持つ」 というフレーズとなり,図2に示すように調査員技能と技術図-1 環境測定分析のステップ 4)ステップ試料採取・採水・吸引捕集(採取量計量)操 作・・採泥作 業・ボーリング・縮分etc.機材・タイミング・場所労力・時間・設備・技能機器・経験(保存・輸送)実施する上での問題点前処理測定・分析・分取・計量・分離(抽出・脱着)・妨害物質の除去(分解・クリーンナップ)・濃縮・反応(誘導体化・発色)・計測・解析・結果計算株式会社環境管理センター村井 政志4図1 環境測定分析のステップ4)22企業における技能と技術の融合と人材育成について 特集環境・化学系職種における技能と技術の融合と人材育成について

元のページ  ../index.html#24

このブックを見る