3/2009
39/48

7.おわりにば,勤勉で穏やかなスリランカの労働力はより付加価値の高い産業を構築する可能性は十分にあるといえる。 またスリランカは観光資源に恵まれている。例えばアヌラーダブラやポロンナルワの仏教遺跡,シーギリアの岩山の頂上に築いた狂気の王宮や色鮮やかな美人壁画,最後の王朝キャンディなどはいずれも第1級の世界遺産である。変化に富んだ海岸や高地はリゾート地としての歴史もあり,野生動物が生き続けている手付かずのジャング等々の観光資源はアジア屈指のものである。ただ,観光客はスリランカ=内戦=危険というイメージが先行しているのか決して多くはない。スリランカの観光促進政策のソフト的な稚拙さもあるがこれも結局は内戦が影響していることになる。 今回の業務は長期的な展望と視点が要求される内容で,過去の短期派遣にはない難しさが伴った。また国の治安,国民性,文化などに影響されるジレンマもあった。それでも毎日の仕事は本当に充実し,楽しいものであった。それは個々の専門家の業務は小さくても,確実にこの国の発展に貢献できるという誇りに加えてスリランカ人固有の親日感や純朴で敬虔な民族性からくる心地よさに起因するのかもしれない。スリランカは急激な成長はないにしても,着実に発展すると思っていた。 ところが2007年11月,スリランカ軍の空爆をきっかけに事態は急速に悪化し,2008年1月にスリランカ政府はLTTEとの間で締結していた無期限停戦協定の破棄を決定した。以後,政府は武力によるLTTEの壊滅路線へと転向,同時にLTTE側は無差別テロへと内戦は泥沼化と呈した。徐々に北部へと追い詰められたLTTEは一般住民を「人間の盾」として防戦を図るが,ついに2009年5月,LTTEは壊滅し,25年間にわたる内戦は7万人を超える犠牲者を出して事実上終結した。 スリランカの成長を妨げてきた内戦が終結した現在,復興への課題も多い。30万人ともいわれる国内避難民の帰還,旧戦闘地域での地雷の除去をはじめ,外資導入のための基本インフラやJSCoTのような高等教育機関の早期整備などでは日本の一層の支援が望まれている。スリランカが一日も早く近代国家を目指して成長,発展し,真の「光輝く・島(スリ・ランカ)」になることを心から願う。 スリランカへの開発援助に対してほんの一時期ではあったが短期専門家として参画できたことを誇りとし,今後も何らかの形で協力していきたい。 最後に今回の派遣に関してご理解とご協力とを賜りました関係者の皆さまに深く感謝申し上げます。またスリランカで支援活動しているすべての邦人関係者の安全をお祈り申し上げます。ミャンマーバングラデシュカンボジアベトナムインドパキスタンフィリピンスリランカインドネシア中国タイマレーシア台湾韓国シンガポール日本・海前嘉明:「スリランカ職業教育訓練再編整備プロジェクト」,『職業能力開発ジャーナル』,pp.24-26,2006.11月号・JICA:「プロジェクトドキュメント『スリランカ技術教育訓練再編整備計画』」・杉本良男:「もっと知りたいスリランカ」,弘文堂1人当たりGDP(US$)GDP成長率(%)10.7(2005)6.72304325037237978301,3451,3551,6402,0023,1375,71815,48218,39229,91734,1888.29.47.05.47.45.510.75.05.94.75.07.92.2出典:IMF“WorldEconomicOutlookDatebase2007”37図14 JSCoTのスタッフ3/2009表1 アジア諸国の経済指標<参考文献>

元のページ  ../index.html#39

このブックを見る