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5.ISO9001の認証取得状況と事業所の強み6.まとめ 図表6はISO9001の認証取得状況と同業種同規模の他社事業所と比較した場合の自事業所の強みを示したものである。 自事業所の強みは「高品質」であると回答した事業所の割合は,ISO9001の認証を「すでに取得している」事業所と「取得していない」事業所とでは大きな開きがあり,前者の方が17~19ポイント高く約6割(58.8%)を占めている。 また,「高度・高性能な生産設備」が強みであるとする事業所の割合は,ISO9001の認証を「すでに取得している」事業所では25.3%,「これから取得することを検討している」事業所で20.1%,「取得も取得の検討もしていない」事業所では16.9%であり,「取得の予定なし」→「取得を検討」→「取得済み」へとISO9001の認証取得に向けた取り組みが強くなるに従って,その割合は高くなっている。 同様に,「研究開発の能力」,「製品のブランド力」および「マーケティング・販売体制」を強みとする事業所の割合も,ISO9001の認証取得に関して「取得の予定なし」→「取得を検討」→「取得済み」へとISO9001の認証取得に向けた取り組みが強くなるに従って,その割合は高くなっている。 上述のことは,ISO9001の認証を取得している事業所では,同業種同規模の他社事業所と比較して「高品質」を強みとしているところが多く,かつ,「高度・高性能な生産設備」や「研究開発の能力」といった高品質な製品を作り出すことに影響を及ぼす項目についても強みを発揮していると認識している割合が高いことを示している。 ISO9001は,企業が顧客に対してどういう品質・サービスを提供していくのか組織としての方針を定め,顧客が何を求めているのかを把握し,それを提供していくために継続的に改善していく仕組み(品質マネジメントシステム)を規定した規格である。 そのため,企業にとっては,①業務の棚卸をして,業務の標準化を図り,作業標準書や作業手順書などの品質を保持するうえでのマニュアルを作成するこ3/2009と。②各従業員が決められたことを確実に実行しているかを検証・記録し,できていない場合は改善していくことが求められる。その結果,ISO9001の認証を取得している事業所では,これらの一連の組織的な活動を通して「高品質」な製品を作り出す力が培われたものと推測される。 また,ISO9001では,設計・開発に関して①設計・開発の計画,②設計・開発へのインプット,③設計・開発からのアウトプット,④設計・開発のレビュー,⑤設計・開発の検証,⑥設計・開発の妥当性確認および⑦設計・開発の変更管理等の要求事項に対して,具体的に実施しなければならない事項が規定されている。それ故,これらの具体的な項目を実施することによって,設計・開発力が向上し,結果として,「研究開発の能力」を強みとして認識できるようになったものといえる。 このほかにも,ISO9001では,品質に影響を与える設備(ハードウェアとソフトウェアとを含む)の新規導入に関して,設備導入手順書や設備導入実施要領等作成し,導入方法や管理方法などの手順を決めて維持することを規定しており,また,顧客関連のプロセスに関しても,製品に関連する要求事項の確認や顧客要求事項の確認等について規定している。 これらの要求事項に対する企業の組織的な活動や取り組みは,「高度・高性能な生産設備」や「マーケティング・販売体制」といった強みを形成することに関しても影響を及ぼしているものと思われる。 ISO9001の認証取得に関する企業の組織的な取り組みは,企業が行う従業員の能力開発に対して,いくつかのプラスの影響を及ぼしていることが,明らかになった。要約すると,ISO9001の認証をすでに取得している企業では,次のようなことがいえる。① スキルマップ等で現状の技能系正社員の人数,職務遂行能力の可視化を図り,比較的長いスパンで従業員の能力開発を進めている割合が高い。② OJTを効果的に進めるために作業標準書や作業23

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