厚生労働大臣賞(特選)を受賞された髙尾 薫さんに、いくつかお話を伺いたいと思います。

受賞論文:「多様で柔軟な職業能力開発の推進」
    お客様の期待を超える骨太エンジニアの育成
    ~技術系新入社員 モノづくり体験研修の実践~
受賞者:髙尾 薫 
    マツダ株式会社
    人事室 技能研修・マツダ短大グループ
    マツダ工業技術短期大学校

  • 受賞式
  • 特選受賞者

厚生労働大臣賞(特選)の受賞おめでとうございます。受賞されたお気持ちをお聞かせください。

 この度、厚生労働大臣賞(特選)という大変素晴らしい賞をいただき、嬉しく思います。ありがとうございました。この様な賞をいただくことが出来たのも、人材育成の業務に関わることが出来た結果であり、社内外の皆様のご協力があって成し得る事が出来たと、感謝の気持ちでいっぱいです。


今回の論文を書こうと思ったきっかけはなんですか?

 はじめは、マツダ工業技術短期大学校(以下『マツダ短大』という)の前田校長が、ニコニコしながら、職業能力開発論文コンクールのポスターを持って、私に近付いて来たことがきっかけです。その際校長からは、『部門の壁を越えた、一気通貫のマツダらしい人材育成の活動が出来てきたので、職業能力開発に携わっておられる方々に役立てていただけないか』という視点で挑戦することを言われました。
 私たちマツダ(株)は、カーライフを通じて、人生の輝きを人々に提供することをコーポレートビジョンにしています。その為に目的思考と全体最適で捉える『ビジネス効率』の考え方を、新入社員の時から身に付けさせたいと考えています。そしてこの研修は、マツダのモノづくりの考え方に倣い、ビジネス効率の考え方の価値と価格を両立させる取り組みで、各部門のスペシャリストが集まり、一気通貫で部門間の壁を越えた人材育成の内容です。私自身もこの研修について、多くの方々に知っていただくことが、マツダのブランドイメージ向上に繋がると考えていました。また、この研修を論文に整理することで、これまでやってきた『実践での活用に直結する、学びのあり方について』、客観的に見直し、更なるレベルUPに繋がると考え、論文にまとめる事を決心しました。


普段はどのような業務に携われているのですか?

 私は2016年3月から、マツダ短大で講師を務めています。それまでは、山口県の防府工場で、クルマの品質をつくり込む業務をしていました。マツダ短大では、これまでの経験を活かして、図学・基礎製図、測定法、製品の品質、自動車工学等の科目や、技術系新入社員研修、ものづくり実践研修等の企画を担当し、お客様へ提供する品質のつくり込みについて、学生を指導しています。
 その中で私は、クルマづくりの実践の場で活躍する為に必要な考え方について、関連する科目の関係を整理して話す様心掛けています。そして私自身が、課題達成型で実践する力を付け、正しく指導できる指導者を目指し、日々努力しています。


貴社の全社的な人材育成の仕組みは、有益な先行事例として、幅広い分野で貴重な参考になると思われます。貴社の人材育成で一番の強みはなんだと思われますか?

 弊社の強みは、コーポレートビジョンを社員全員が共有している事だと思います。社員は、クルマづくりを通じて、お客様に『走る歓び』を感じて頂く為に、挑戦し続けています。
 私は、『クルマづくり』も『人材育成』も同じであると考えています。各部門で共創し、一気通貫でクルマづくりに取組む事が出来るマツダの風土は、人材育成の場でも強みであると思うからです。今回の論文に纏めた技術系新入社員研修に於いても、全体最適で捉えた一気通貫の取組みに挑戦した内容が、お客様に人生の輝きを提供できる人づくりに繋がっていると考えています。


人材育成に携わる方に一言お願いします。

 マツダ短大では、『目的思考』と『全体最適』という考え方を、徹底して学生に教えています。それは課題達成型で実践力を身に付けることに直結していると考えているからです。学生に目的と目標を明確に提示する為に、講師が意識して行動しなければならないと考えていますが、私自身が頭で分かっているつもりでも、行動が伴わないこともあります。この考え方を理解し行動が伴った時、初めて本当の意味での指導者として、お客様基準で実践できる人材を育成できていると考えています。今後も、周囲の人から信頼される、目的思考と全体最適の一気通貫での取組みを、率先し続けたいと考えています。


来年も是非、教材コンクールへの応募をお待ちしております。



 明治記念館にて、受賞者の方々とお話する機会をいただけました。受賞者の職業能力開発への取組み姿勢や熱意等を肌で感じることができ、非常に感銘をうけました。
 また、普段行っていることを論文にし、広く発信することも非常に大切なことであるなと改めて感じました。事務局の一員として、職業能力開発論文コンクールに携われたことを非常にうれしく思います。
 最後になりましたが、沢山のご応募をいただき、誠にありがとうございました。
 来年度は「職業訓練教材コンクール」が開催されますので、今から準備方、宜しくお願いいたします。

職業能力開発論文コンクール事務局 長谷川