当教材開発室では、本年度から新たな調査研究テーマに取り組んでいます。

 本紙をご覧のみなさまは、「職業訓練指導員(以下「指導員」という。)」をご存知ですか。
 職業能力開発促進法には、普通職業訓練を担当する指導者は、各訓練職種に対応した「職業訓練指導員免許」を受けた者でなければならないと規定されています。現在、免許職種は123職種あり、この免許は、免許職種に関する当校が行う指導員養成訓練を修了することや、一級(又は単一等級)技能士が指導方法等に係る48時間講習(都道府県職業能力開発協会が実施)を修了すること、指導員試験に合格することなどによって取得できます。
 職業訓練指導員免許は例年約3,000人が取得する国家資格ではありますが、一般的には認知度が低い資格です。平成13年には、約5,000人あった職業訓練指導員免許取得者数は、年々減少傾向にあります。このような傾向は、公共職業訓練施設や認定職業訓練施設等における職業訓練指導員の確保の面で影響を及ぼしかねません。
 このため、職業訓練指導員免許取得者の増加に寄与することを目的として、職業訓練指導員試験(以下、「指導員試験」という。)の受験資格等の拡大について検討を開始しました。これが本年度からの当室が担う新たな調査研究テーマです。各免許職種に並ぶ民間等の資格を有している者に、受験資格や試験科目の一部免除を付与することで、指導員試験の受験者数の増加を期待するものです。
 指導員試験は、問題の作成から試験実施、免許の交付までを都道府県が実施しています。また、全国の免許交付件数は、厚生労働省で集計されています。この集計データに基づき、初年度は指導員不足が顕著な免許職種として、溶接科の受験資格等の拡大について検討を行いました。
 また、特記として、他の免許職種には、技能士であることによる受験資格や試験の一部免除の特典がありますが、溶接科には対応する技能検定職種がないため、このことも当該科の指導員試験の受験者数が少ない要因の一つであると思われます。

 現在、溶接科の指導員試験の受験資格は、当該免許職種に関する指導員養成訓練・高度職業訓練・普通職業訓練・大学・短大・高等専門学校等を修了又は卒業し、かつ、それぞれに応じた実務経験を有する者に与えられますが、これ以外にもボイラー溶接士にも与えられています。
 なお、実務経験のみであれば8年以上とされています。
 試験科目の一部免除は、当該免許職種に関する指導員養成訓練・大学・高等専門学校等の修了又は卒業者に、それぞれに応じて、指導方法、関連(専門)学科又は実技、あるいは両方の試験が免除されます。
 なお、特別ボイラー溶接士である者は、指導方法を除き、関連(専門)学科及び実技の試験が免除されます。
 前述のとおり、溶接科の指導員試験には、民間等の資格としてボイラー溶接士に受験資格や試験の一部免除が認可されているわけです。このように、ボイラー溶接士同様、他の民間等の有資格者に受験資格や試験の一部免除が妥当かどうかの検討・判定を行いました。
 検討は、溶接の専門家の方々を委員として招聘し、研究会を開催して行いました。溶接業界に身を置かれている方には、既知のことではありますが、溶接に係る資格試験・認証制度を調査して見ると、様々なものが確認できた一方で、その多さ、制度の複雑さに困惑しました。
 しかし、そこは専門家の方々です。分かりやすく整理・検討をいただき、受験資格等の拡大に向けた提案を導き出していただきました。以下に、研究会での検討結果概要を図示します。


  • 改正提案

 この検討結果は、厚生労働省 人材開発統括官に、本件の改正に係る審議資料として提出します。
 本提案が承認されること、また、それにより溶接科の職業訓練指導員免許の交付件数が増加することを期待しています。