今年度の在職者訓練開発室は、「在職者訓練に関する調査研究・開発」に関する3テーマに取り組んでいます。

 1.在職者に対する高度なITの訓練に関する調査・研究
 2.若年非正規雇用労働者に対する在職者訓練コースの設定、実施プロセスに関する調査研究
 3.機構が実施する在職者訓練に係るカリキュラム等の検討

 今回は、平成27年度から取り組んでいる「2.若年非正規雇用労働者に対する在職者訓練コース・・・」の一環として、平成27年度に行った「訓練ニーズの把握・分析」結果の概要についてご紹介します。

 本調査研究は、不本意ながら非正規雇用を繰り返し、企業内の人材育成機会に恵まれない若年労働者が、働きながらでも、安定雇用に向けて訓練が受講できるよう、土日・夜間などの在職者訓練コースを開発し、試行実施し、試行実施から得られた課題等を検証し、コースの設定及び実施に係るプロセスを整理することにより、以降の普及に資するものとすることを目的に実施しています。
 具体的な調査・研究・開発内容としては、以下のとおりです。

  ①若年非正規雇用労働者向けの訓練ニーズの把握・分析
  ②訓練内容、訓練期間、訓練方法等の検討・関係機関との協議
  (夜間・土日実施等のコース開発)
  ③開発した訓練コースの試行実施
  ④実施コースの有効性・課題の検証・コース設定及び実施プロセスの整理・普及

以下には、平成27年度に実施した上記①の調査についてご紹介します。

(1) 訓練受講予定者を対象とした調査
  ①わかものハローワーク利用者対象アンケート調査(回答723件)
  ②わかものハローワーク就職支援ナビゲータ対象ヒアリング調査(回答25件)

わかものハローワーク等を利用し正社員としての就労を目指している若年求職者を対象に今までの職歴、現在の就業・生活パターン、希望職種、スキルアップの考えなどを調査し、開発する訓練コースの分野、内容、訓練実施方法などの検討材料とすることを目的にアンケートによる調査を行い、併せて、アンケート調査の結果のみでは掴めない傾向や補完を行うため、就職支援ナビゲータを対象としたヒアリングによる調査を行いました。

○アンケート調査結果概要

わかものハローワーク利用者の傾向(わかハロ利用者を対象としたアンケート調査)
 ①学生時代よりも、熱心に就職活動している方が多い(39%)
 ②週4~5日働き、土日を休日としている方が多い(55%)
 ③訓練を通してスキルアップが必要と考えている方が多い(80%)
 ④訓練内容は、講義、職場見学、グループワークを組み合わせたものを希望する方が多い(48%)

[まとめ]
 ・週4日以上日中に仕事をしている方のうち、約5割が「事務的」、「専門的・技術的」、「生産
  工程」の職種に就いており、そのうち約7割は、訓練の実施日として、土日・夜間または、
  曜日を問わないと回答している。常用派遣労働者全体の7割以上を上記3職種が占めること
  を鑑みると、上記3職種従事者は「曜日を問わない」とする傾向にあり、曜日・時間帯の工
  夫よりも訓練内容に重きを置いて開発することが必要である。
 ・訓練分野については、希望職種が事務職を希望する方が多いため総務経理分野の訓練を希望
  する方が多いものの、一般事務の求人倍率が低いこともあり、製造業や技術サービス分野な
  どの「企業を知る」という意味でも、ものづくり系の訓練を実施する価値がある。
 ・問題発見解決能力の向上などのため、グループワークをカリキュラムの要所に導入するなど
  の工夫が必要である。

●ヒアリング調査結果概要

わかものハローワーク利用者の特徴(就職支援アドバイザーを対象としたヒアリング調査)
 ①利用者の中には、一部職業観が低い方がいる
 ②女性は事務職を希望するケースが多く、男性でも最近は事務職希望が高い傾向がある
 ③営業職はルート営業を希望する方が多い
 ④事務職は実務経験を求められることが多い
 ⑤生産工程等の職業は、ものづくり関連の基礎知識や技能が就職に有利に働くケースが多い

(2) 企業における人材育成に関する調査
 ①非正規労働者を多く抱える企業を対象としたヒアリング調査(5団体・社)

 派遣・請負業などで非正規雇用労働者への人材育成に積極的な企業を選定しヒアリングによる調査を行い、企業内での人材育成の方針、教育訓練手法、正社員登用の考え方などを把握し、訓練コースの開発、展開方法の検討材料にすることを目的に調査を行いました。

◎ヒアリング調査結果概要

企業の人材確保および人材育成(派遣・請負業などを対象としたヒアリング)
 ①仕事・業界の理解定着率向上に寄与している
 ②人材育成は短時間で完結する内容に連続性を持たせ、体系化させる
 ③派遣先で人材育成を実施することは困難
 ④本人の希望で登用試験を受験可能
 ⑤非正規のままで良いと考えている者もいる
 ⑥QCDSMに技能を積み上げ、その後マネージメント力を付与したのち、登用を検討する
  (Q:品質管理、C:コスト、D:納期、S:安全、M:モラル/モラール)

平成27年度の調査結果と各種先行研究・統計を参考に研究会及び訓練カリキュラム開発のための作業部会を開催し、平成28年度に機構施設において試行訓練の実施を行い、その結果をもとに検証する予定です。